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自賠責保険

全国交通事故遺族の会 副会長 戸川孝仁

 

プロローグ
6月28日(土)、「クルマ社会を問い直す会」6月度月例ミーティングに、全国交通事故遺族の会として招かれて、ドライブレコーダーと自賠責保険についてのミニ説明会をさせていただきました。
「クルマ社会を問い直す会」は、営利目的や、我々のような被害者団体でもないにも拘わらず、誰もが当然のように享受している「車」の存在にたいして、疑念と異議を唱えています。そうした主張に強い共感を覚えながらも、私たちは車に依存し続けています。私たちの家族は、もしもこの世に車さえ無かったならば、死ななくても済んだのです。車社会の最大の被害者は私たちかも知れません。にもかかわらず、一度事故に遭い、または愛する家族を失ってみると、車のありがたみは何ものにも代え難いものです。遺った者の負い目でしょうか、外に出て、人の視線に曝されるのが怖く、車に頼らない外出が億劫になります。また体調を崩した家族の病院通いには、車は必需品です。会員の多くが、こうしたジレンマで苦しんでいます。
そんな折り、今回の依頼に接したわけですが、正直にいって大きな躊躇がありました。自賠責については、いわゆる専門書がたくさんあり、素人の私たちが説明するまでもないでしょう。だとしたら、遺族でなければならない話をしようと決意しました。
遺族の会は、10年以上にわたって自賠責保険と関わって来ました。この戦いは、自賠責を企業成果に変えようとする損保業界と、膨大な資金と権力を握る行政の修羅場に、割って入るようなものでした。私たちが主張した「現行自賠制度の存続」は、結果として、行政の援護射撃をしたことに他なりません。しかし、被害者救済と事故撲滅を考えたとき、この選択は間違っていなかったと確信しています。この葛藤と自画自賛を、初めて外部の人に話してみようと考えました。
「クルマ社会を問い直す会」と全国交通事故遺族の会のこうした交歓は、無駄なことだとは思いません。安全で快適な社会を築くために、様々な人が、様々な形で取り組んでいけば、やがては理想像に繋がるものと信じます。
以下は、説明会で話した内容をまとめたものです。知識の無さ、文筆の悪さはご容赦ください。

はじめに
自賠責保険は、車を持つ者に等しく課せられる保険でありながら、税金のようなものと考えている人が多く、国民の保険への関心は存外に低いものです。つまり大多数の人にとっては、事故に遭ったとき、初めてこの保険の存在と、ありがたみを知ることになっているようです。
自賠責保険は、交通事故被害者の強い味方でありながら、一方において保険会社の大きな、しかも安定した収益源となっています。また国土交通省や金融庁などの行政にとっても、大きな権限の拠り所になっていることも事実です。
全国交通事故遺族の会は、損保会社による自賠責保険の不払いや、払い渋り事件をきっかけに、健全な保険制度に高めるよう、10年以上に渉って運動して来ました。また自賠責保険の民営化の動きをくい止め、政府再保険制度が廃止された後、ややもすれば経済原則に押し流されて、法の精神である「被害者救済第一主義」が後退するのを押し返して来ました。
本章では、交通事故被害者というレンズを通して、内と外から見た自賠責保険と、その問題点を書き起こしてみたいと思います。

1.交通事故の実態
交通事故は、経済成長に伴い戦後一貫して増加して来ました。昭和44年には、死亡者の数は16000人を超えるという最悪の事態を迎えました。その後バブルの崩壊などがあって、交通事故がやや減少するという時期もありましたが、昭和52年頃から再び上昇に転じ始めました。しかし、車の安全対策や救急救命技術の向上など、様々な取り組みもあって、平成4年の11000人を境に、死亡者数は頭打ちとなり、現在に至るまで漸減傾向にあります。ただし交通事故の発生件数、および負傷者の数はこの間も増え続け、交通戦争いまだ真っ直中と言われ続けていました。そうこうする中、平成16年には、事故発生件数と負傷者数についても減少傾向が現れ、ようやく日本は交通事故の増殖を押さえきったとまで言われるようにまでなりました。
交通事故の減少原因については、取り締まりや加害者への厳罰化など諸説ありますが、少子高齢化社会という、自然減的なファクターも見逃せません。現在死亡者の半数が65歳以上の高齢者で占められるなど、新たな問題と課題が発生して来ています。

2.自賠責保険の誕生
自動車損害賠償責任保険(通称 自賠責保険)は、昭和30年、日本が高度経済成長の波に乗りかかったころ出来た、交通事故被害者を救済するための損害賠償保険制度です。
当時、道路などインフラ整備はまだまだ不十分であり、それに倍する車の増加に伴い、交通事故とその被害者は激増していました。しかし被害者救済という社会的認識が低かった時代、被害者は轢かれ損・殺され損という悲惨な状態で、特に経済的な救済は急務になっていました。一方交通事故は、加害者側にも過酷な制裁を押しつけています。すなわち損害賠償という民法の考え方は、損害を与えた側に、全補償を義務づけているからです。治療費や慰謝料、なかでも逸失利益が年々高騰しており、加害者のみの資力では保障出来なくなったという事情もありました。自賠責保険は被害者のために出来たと、一般には考えられていますが、実は加害者の救済という側面が強かった実状も否めません。
自賠責制度が誕生したため、被害者や遺族に対して一定の保障がなされることとなりました。現在においても、日本ほど完結した被害者保障制度は珍しく、世界に誇ることの出来る制度だといえます。

3.自賠責保険とは
自賠責保険制度は、「自動車損害賠償保障法」という法律に拠っています。この法によれば、自動車および原付自転車を使用する際には、所有者の誰もが加入を義務づけられることになっています。例外的に、自衛隊の車両や耕耘機など小型の農耕車などは、この適用から外れています。
今年、平成20年に自賠責保険料が11年ぶりに改定された結果、現在自家用小型車の年間保険料は約13000円(保険料は使用形態・車種や所在地などで異なります)となっています。保険者は「法定車両検査」(車検)時に、原則として、一括で保険金を支払うことになっています。すなわち、保険料を納めなければ車検が通らないという仕組みで、そのため、この制度は「強制保険」とも呼ばれています。
交通事故の被害に遭った場合、この制度から保険金が被害者に支払われます。その保険金の限度額は、傷害者120万円(112万人 40万円)、後遺障害者4000万円(52600人 440万円)、死亡者3000万円(6100人 2430万円)となっています(カッコ内の数字は、平成19年度に支払われた自賠責保険の、被害様態ごとの人数と、支払われた保険金の平均額)。保険金が被害者の救済にとって充分かどうかという議論は別にして、取りあえず、保険金が支払い限度額の範囲に入っていることだけは読みとれます。

4.自賠責保険の特徴
自賠責保険は、全ての車の持ち主から保険料を徴収することによって、交通事故被害者が簡単な手続きで、かつスピーディーに損害賠償金を受け取ることを目的にしています。
そのため被害者にとって、有利な状態を維持する制度となっています。その端的な例として、保険金が安いこと、重過失減額(被害者に一定の過失があっても、支払われる)と、加害者の家族が被害に遭っても保険金が支払われる、などがあります。
一方問題点としては、メリットの裏返し、すなわち保険金の限度額が低い、人身事故にしか対応していない、加害車側には保険金が下りない、車を凶器とした犯罪の被害者は対象外とされる、などがあげられます。
重過失減額がなぜ被害者寄りかというと、事故原因の過失が、例えば被害者側に90%ある場合でも、保険金の80%が支給されるからです。自損・自爆事故のように、被害者側の過失100%とされる事故は「無責」といわれ、保険金は支払われません。毎年、こうした無責とされる被害者が数百人いることも事実です。

5.自動車保険との相関
自動車保険(通称 任意保険)は、自賠責保険制度の限界、すなわち支払い保険金限度額が低いことを補うために作られた、民間の保険制度(商品)です。ほとんどの保険金が高額であったり青天井という無制限であったりして、十分な補完機能があるとされています。また車両保険とセットになっていたりして、ユーザーにも利点の多い制度です。
しかし、問題点も多々あります。第1は保険料が高いことです。ほとんどの商品は、年額3〜5万円もするため、車を大量に保有する一部の事業者が、意識的に任意保険に入らないという弊害が起きています。賠償は自己資力でカバーすることが出来るという理屈ですが、当然示談交渉の場面などで、支払い側の厳しい対応が予測され、被害者救済のスタンスが乱れるだろうことは容易に想像出来ます。また最近は、経済的な理由から任意保険に入らないまま運転する若者(無保険車)が増え、被害者を苦しめています。
問題の2番目は、商品には基本的に被害者救済という理念がないことです。すなわち事故原因を厳格に調査して、被害者側にも過失分を認めさせるからです。とくに示談交渉の場において、保険会社の対応で二次被害に遭う被害者も少なくありません。
保険会社は、被害者との間で損害賠償金の一括請求(すべての賠償交渉を任意保険の会社側と行う)をさせています。現在、自賠責保険と任意保険は2階建て構造と称されています。彼らは自賠責保険の限度額内であれば、自社の任意保険を一切使わなくてすむこともあって、いわゆる「払い渋り」という問題が頻発しています。
自賠責と任意保険を合算した全補償額で見てみると、死亡で3600万円、後遺障害で5600万円です。これを自賠責と任意の比率で比較すると、死亡67:33、後遺障害46:54となります。いずれにしても、保険料から計算した任意保険の支払い率は、きわめて低いものになっていることが理解いただけるものと思います。逆を言えば、それだけ自賠責保険は、保険者にも被保険者にもメリットの多い制度です。

6.自賠責保険民営化の流れ
世に「改革」の声が湧き立ち始めたころ、自賠責保険も民営化の波に翻弄された時期がありました。今から20年前、行政改革法なるものが成立し、政府自民党の中に、「行政改革推進本部」が作られました。さらに「規制緩和委員会」という小委員会が目覚ましく動き出しました。税金と同じように、確実に保険金を徴収できるシステムは、民間の保険会社にとって垂涎の的です。大手の損保会社を中心に、同委員会にたいして、自賠責保険の民営化を求める声が高まりました。
自賠責保険の民営化は、被害者救済の放棄につながると、当時の遺族の会は積極的な反対運動を起こしました。「行政改革推進本部」でのヒヤリングを皮切りにして、設立されたばかりの超党派議連「交通事故問題を考える国会議員の会」での総会で井手会長が民営化反対講演を行ったり、国会での議員訪問や行政に働きかけた結果、ついに行革推進本部は「現状での民営化は、実状にそぐわない」と結語して、民営化の危機を脱することが出来ました。
それでも諦めきれない損保会社は、次のターゲットとして「政府再保険制度」に目をつけて来ました。

7.政府再保険制度
話は前後しましたが、自賠責保険が交通事故被害者を救済し、片や加害者の経済的破綻を未然に防ぐという成果をあげて来られたのは、「政府再保険制度」にあったといっても言い過ぎではありません。再保険とは、保険会社が集めた保険料の60%を、改めて保険料として政府に納める制度です。保険会社に十分な資力がなかったころ、支払い側の破綻によって、被害者の救済が立ち後れることを防ぐために設けられた制度です。
政府はこの再保険料で支払い保険金を確保するとともに、再保険金を運用することによって得られた運用益で、被害者救済のための具体的施策(例 療護センターなど)や、交通事故防止に関わる施策(例 事故対策センターなど)を行って来ました。
また行政の窓口である国土交通省(当時は運輸省)は、死亡や後遺障害などの重大事故について、適正に保険金が支払われているかどうかを全数調査を実施して来ました。これにより、損保会社の払い渋りを防いで来ました。
つまり法でいう被害者救済は、この政府再保険制度があって、初めて効果を発揮したということが出来ます。

8.再保険制度廃止に至る経緯
自賠責保険民営化の夢が潰えた保険会社側は、次にこの再保険制度の廃止を声高に訴え始めました。その背景には、保険会社の体力が向上し、もはや初期のころのような、政府の直接的支援は不必要と判断したからに他ありません。民間で出来ることは民間で、という規制緩和のかけ声に乗ったものともいえます。
もうひとつ重要なことがあります。それは長い政府再保険制度の歴史の中で、積もり積もった運用益が、なんと2兆円にも膨らんでいたからです。この膨大な資金を手放すまいとする当時の運輸省と、利益のユーザー還元を旗印にして、運用益を営業活動に用いたい損保会社との間で、熾烈な駆け引きがあったと想像出来ます。
平成11年2月、運輸省は「今後の自賠責保険のあり方に係わる懇談会(通称 自賠懇)」を立ち上げて、公に議論することになりました。
自賠懇には、初めて被害者代表が参加を認められ、遺族(井手会長)と後遺障害者団体の代表が加わることになりました。
遺族の会としてはこの間、行政改革推進本部で再保険制度廃止について反対を表明しました。また平成13年6月5日には、衆議院国土交通委員会に井手会長が参考人として招致され、同制度廃止にたいして、強い反対意見を陳述しました。さらに遺族の会は、全国的な署名運動を展開して、金融庁長官に提出するなど、会をあげての反対運動を展開しました。

9.自賠責懇談会
自賠懇では、損保協会などの業界代表の他、学識経験者やマスコミなど多彩な顔ぶれで、再保険制度の見直しについて様々な議論が戦わされました。遺族の会は、再保険制度の廃止は、被害者救済の明確な後退と位置づけ、制度の廃止そのものに異を唱え続けました。
しかし時代の流れもあり、再保険制度の廃止も止むなしとなった会議の流れを受け、井手会長は大きく舵を切り替えて、被害者保護の確保に専念することにしました。
最終的には、「適切な保険金支払いが確保されること」など、被害者保護5条件を担保に再保険制度の廃止を承認する運びになりました。巨大な運用益は20分の11を、ユーザーに保険料として還元する(保険料の値下げ)こととし、残る20分の9は国にプールして、さらにその運用益を被害者救済と交通事故撲滅に用いることになりました。これが、現在の自動車損害賠償保障事業特別会計(通称 自賠責特別会計)です。井手会長の孤軍奮闘が、この特会を残したとも言えなくもありません。

10.自賠特会(現在は、自動車安全特別会計)の被害者救済と、事故防止対策
現在多くの行政が、それぞれ自由に出来る特別会計というお金をもっており、国民からは冷たい視線を浴びています。政治の舞台でも「霞ヶ関埋蔵金」などと揶揄されて、機会あるごとに狙いをつけられています。我々もそうした市民の一部であり、不適切な内部留保には賛同しかねるところです。
では自賠特会はどうかというと、まだまだ不十分な被害者対策を進める上で、必要不可欠な制度と考えています。なによりこの特会があったがゆえに、私たちの意見が取り上げられ、実現してきた実績を重んじたいと思います。世の中には、特別会計からではなく、税金という一般財源で被害者救済をやるべし、という一見正当論もあります。しかし国の緊縮財政の中にあって、被害者救済に新たな財源を割くことの難しさ、さらには、それを永続させることはもっと至難なことと考えられます。
自賠特会は、大きく区分して、保障勘定と自動車事故対策勘定に色分けされます。保障勘定でもっとも身近なものは、政府保障事業です。すなわちひき逃げや無保険車などに遭った被害者に、国が代わって補償金を給付するものです。昨年は3000人のひき逃げと600人以上の無保険車被害者が、政府保障事業で救済されました。
一方、事故対勘定の原資として2450億円がプールされています。この資金を運用することによって得られる利益の約50億円と、原資を取り崩した100億円、合計150億円が、被害者救済と事故防止に充てられています。
こうしたお金の使途については、自賠責あり方懇談会、および自動車損害賠償責任保険審議会(通称 自賠責審議会)で常に厳しく監視されており、被害者代表の私たちの意見も随時取り上げられ実現しています。

11.保険料の値下げ
この10年近く、交通事故の様態は大きく変化しました。ひとつは死亡者の着実な減少です。最高時16000人もの人命が失われていた交通事故ですが、インフラの整備や、車の安全対策、さらには救急救命技術の向上により、死亡者数は着実に減りつつあります。昨年はついに5000人台にまでなり、この傾向は、今後も続くものと予測されています。
もうひとつは交通事故の発生件数と負傷者数の変化です。死亡者が減る一方、事故件数と負傷者は相変わらず増え続けていましたが、平成15年を境に、これらにも縮小傾向が見られるようになってきました。経済情勢や車の利用率の変化など、様々な要因が重なった結果だとは思いますが、事故を減らしたいと願ってきた私たちの思いが通じたわけで、素直に喜びたいと思います。
さて自賠責の保険料が、今年大きく値下げされました。1月に開かれた自賠責審議会で承認されたものです。自賠責保険はあくまでも保険ですので、保険料と保険金、すなわち収入と支出の均衡が求められています。これを「ノーロス・ノープロフィット制」といいます。この仕組みによって、昨今減少気味にある交通事故を反映して保険料率を下げるに至ったものです。

12.被害者救済と事故防止対策の今後
自賠責あり方懇談会を通じて、被害者の救済は日進月歩しています。とくに後遺障害者対策では大きな成果が見られました。しかしながら、療護施設の期限付き利用制限など、機会均等の名のもとに、質の低下と取られても仕方がない事例もおきています。私たちが繰り返し主張してきた「親亡き後の後遺障害児」の問題など、未だ道筋も示せない事柄もあります。後遺障害者対策は、依然として途上にあるともいえます。
さらに死亡者にたいする問題は、後遺障害者対策の陰に隠れて忘れ去られている感があります。私たちが求め続けている、死亡者の支払い限度額の引き上げなどが、象徴的な例として存在します。
このところの厳しい財政事情もあってか、自賠責特会の一部が政府に貸し出されているため、被害者救済に振り向ける必要な運用益を得ることが出来ません。そのため元金に手をつける事態になっており、資金調達のシステムが変調を来しています。そのためか、この数年の事故対策勘定の漸減には、心穏やかではいられません。

13.無保険車
現在、日本の狭い国土の中を、およそ8000万台もの車が走り回っています。しかしその中の、自賠責対象車の5%近くが無保険車だともいわれています。自賠責保険に入っていなければ、当然事故を起こした場合、被害者は保障されないことになります。そのために政府保障制度はあるわけですが、自分勝手な考えによって、自賠責保険が無駄遣いされることになってしまいます。
無保険車には大きな2つの問題があります。前にも述べましたように、自賠責保険は車検時に強制徴収されます。ところが車検の無い農耕軽車両や原付バイクなどは、自主的な保険金の納入に頼らざるを得ません。すなわち強制保険でない車種において、今の制度には大きな抜け道があることになります。
もう一つは、犯罪車です。盗難車はそれ自体が無保険車です。また、その車が事故を起こしたり、新たに別の犯罪に利用される可能性も低くはありません。保障事業があるから、良いということではなく、自賠責制度の欠陥を埋めることが大切です。盗難車防止のためには、免許証をICカード化し、さらには車のキーと連動にするなどの対策が急がれます。
本題からは外れますが、自転車の問題も無視出来ません。最近、自転車と人との重大事故が取りざたされています。自転車は、道交法において「軽車両」として位置づけられていながら、自賠責保険の対象にはなっていません。自転車の起こす事故増加が予測される現在、それにたいする備えは、ますます急務になっています。

14.終わりに
3年前の「犯罪被害者基本法」の成立を受けて、被害者を取り巻く環境は著しく変化しました。交通事故の被害者も犯罪被害者であるとする認識が定着したことは、もっとも大きな成果です。しかし一方において、自賠責の保険としての役割がトーンダウンして来たことには失望を隠せません。保険と税の境界が不明瞭になったことで、一部の人の中では、自賠責保険不要論が囁かれています。とはいえ保険料に相当する額を税で集めるという困難さを考えれば、一気に廃止というわけにはいかないでしょうが、交通事故が、車社会の負の遺産として見なされなくなることは、納得出来ないことです。
私たちは交通事故の被害者でありながら、また自賠責保険の保険者でもあります。その私たちが、いまだ現行の自賠責保険制度に不満足感を抱いています。だとすれば、今後の自賠責保険のあり方も、自ずから見えてくるのではないでしょうか。
こんな心と目をもって、これからも自賠責保険制度がより良い形に進化し、存続されて行くよう、私たちは見守っていきたいと思います。