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代表より

杉田正明

 今回はこの間お聞きした2つの講演を話題にします。
 本号のリポートで触れた「環境・交通・まちづくり市民フォーラム2009」で、私は村上敦さんの「フライブルク市の環境・交通政策を学ぶ」と題する講演をお聞きしました。2008年11月に当会の北海道の仲間がお招きしてやはり村上敦さんに講演していただきましたが(会報54号の地域活動連絡係中村欣嗣さんの報告を参照願います)、今回私は東京で直接お話を聞くことができました。
 村上さんのお話で一番興味深かったのは、中村報告を呼んだときに感じたと同様、フライブルク市の市民は、路面電車の駅から徒歩5分以内に70%の人々が住んでいること、またバスを含めた公共交通の駅から徒歩5分以内に95%の人々が住んでいること、フライブルク市は都市計画規制・建築規制によって時間をかけてそこまで人口配置の誘導に成功したことでした。
 次に私は12月5日に開催された「第4回人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」で、富山市長である森雅志さんから大変印象的な講演をお聞きすることができました。森市長は、富山市では現在鉄道駅から500m以内、あるいは1日60本以上走っているバス停から300m以内に28%の市民が住んでいるが、20年後にはそれを42%に拡大することを目指していると話されました。そしてそのために市の中心地域に市民に多く住んでもらうよう取り組んでおり、中心地域の集合住宅建築に補助金を出し、かつ中心地域で建設された集合住宅を市営住宅として借り上げることを行っていると話されました。また中心地域の利便性を高めるために、既存路面電車路線を延伸・連結して中心地域での環状化を実現し、その環状線においては新たに追加して10分に1本の間隔で路面電車を走らせること、そして環状線の沿線の魅力を高めるべく再開発等を行っていること、さらに中心地域で発着するバスについては65歳以上の人の運賃は100円とし必要な補助を行っていることを話されました。また鉄道利用者を増やすために、JR高山線に新駅を一駅作ってもらったこと、さらにJR高山線の運行頻度を高めるため富山市が1日34本チャーターして追加して走らせていることを話されました。
 こうした政策への補助金等の支出額はかなりの額になると思われますが、これら政策を議会で承認させている森さんのリーダーシップに大いに拍手を送りました。コンパクトシティ化が現在あちこちで言われていますが、日本でこれほど明快な形で既に取り組んでいる事例を私は聞いたことがありません。
 LRV化された富山港線の沿線では他のエリアで住宅着工件数が減少しているにもかかわらず、集合住宅を中心に着工件数が増えているそうです。また、このLRV線は日中多くの高齢者が利用しており(65歳以上は100円)、おそらくこの沿線では要介護者の比率が他のエリアよりも低くなるのではないかと推測しているとも話されました。
 さらに私がびっくりしたのは、このLRV線では朝の通勤時間帯9時まで信用乗車を実施しており (切符の検札を行わない、乗降客の自己改札に任している)、乗務員のいない扉からの迅速な乗降を実現しているとの話を聞いたことでした。
 私は実は一昨年福井の路面電車サミットに参加した帰りに富山にも寄って、富山の路面電車に乗り、その沿線の状況を眺めてきました。私は海側のLRV線よりも内陸側の従来線の路面電車が大変気に入りました。5分間隔で走っており(海側のLRV線は15分間隔)、富山市の中心市街地の大半をカバーしていて、沿線のお店がよく分かり、行き交う人々を眺められる(海側ではお店も道路も見えず住宅地の間を抜けるだけ)ので。帰ってから私は周りの人々に富山は既にコンパクトシティ化のベースがかなりできている、見に行くべきだと話しました。今回の富山市長の話からするとさらに良くなりそうで楽しみです。
 はじめに紹介した村上さんの話で興味深かったことの一つに自転車レーンの話があります。フライブルグ市では市内の道路が500kmある中で既に420kmに自転車専用レーンが設けられているとのことでした。8割以上の設置率です。日本では片側2車線以上道路は圧倒的に少なく、片側1車線以下が大半を占めるため、この数字は驚異的です。そこでなぜそんなことが可能か確認しようと講演終了後になったのですが質問しました。彼の話ではフライブルグは片側2車線以上が大変多い、日本の規格を持ち込めば歩道とは別に片側3車線くらいとれる幅のある道路が少なくないとのことでした。道路として取り上げられた500kmがどういう定義か確認していないので正確なところは分からないのですが、基礎的な条件が違う蓋然性が大との印象を持ちました。