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 クルマ社会(自動車に過度に依存する社会)の見直しに関する公開質問状
        最終更新日:2000.06.21


クルマ社会(自動車に過度に依存する社会)の見直しに関する公開質問状

各政党総裁、党首、代表、委員長、政策責任者 殿

                   2000年5月15日
                   クルマ社会を問い直す会

 今、日本には7千万台の自動車が保有されていると言われています。この数字は、国土が狭い上に世界有数の森林国で、可住地面積は国土の20%に過ぎないという限られた土地に自動車がひしめき合っていることを意味します。

 自動車は、移動能力や運搬能力が弱い人間にとって、ドアツードアの利便性や輸送能力のある文明の利器です。利器であるがためにここまで普及してきたとも言えます。しかし、利用が適正な度合いを越え、それがもたらすマイナス面を制御する適切な施策が取られないと、利器は迷惑物や凶器に転じます。日本は世界有数の自動車社会に成長した結果、人間が安全に暮らすという最低限度の権利さえ日常的に枚挙に暇がないほど侵害されているのが現実です。私たちはこの歪みを正し、人間が賢明さを持って自動車を活用できる社会をめざして、自動車中心でなく、人間中心の交通政策、道路政策を求めて5年前に発足し、運動をつづけている市民団体です。会員は、北海道から沖縄県まで全国各地に居住する350人です。以上のような観点から以下の質問をさせていただきます。

 選挙の準備でお忙しい中、恐縮とは存じますが、選挙は政策で争われるものです。国民生活の安全を守ることは政治の最大の課題ですから、貴党の政策に則ってぜひともご回答くださるようお願い申し上げます。

 なお、ご回答いただいた内容はそのまま当会の会報に掲載させていただきます。同時に各新聞社・通信社、テレビ局など主要なマスメディアに紹介させていただきます。

 ご回答は5月末日までに下記宛て先までお届けください。
(連絡先:ここでは省略)
《アンケート項目》

1)毎年、交通事故のために、事故後24時間以内の死亡者に絞った警察庁の統計でも、1万人前後の人が命を失い、90万人以上もの人が重軽傷を負っています。重傷者の中には生涯寝たきりになる人、後遺症を一生背負い続けなければならない人も多数います。戦争でも自然災害でもないのに、しかも毎年連続してこれほどの死傷者を出すクルマ社会は、安全に暮らすという基本的人権が日常的に侵害されている異常な社会です。交通事故による死者が1万人を割るかどうかで一喜一憂している今の交通安全対策も、人命は一つ一つが大切であるという視点から見れば適切な対策とはとうてい言えません。以下のような交通事故による死傷者を限りなく0に近づける目標と計画を持ってこそ本来の交通安全対策であると私たちは考えますが、貴党のご見解と交通安全政策をお聞かせください。

2)今日、日本は着実に超高齢化社会を迎えつつあります。高齢者の歩行の安全を保障することは社会の急務です。障害者のノーマライゼーションも社会の必須条件です。子どもたちが屋外で伸び伸びと遊ぶことも健全な発育にとって欠かすことができません。ところが実態は、歩行者・自転車利用者だけでも6000人近い人の命が奪われ、高齢者だけでも死者は3000人に上ります(厚生省統計による)。私たちは、住宅地や近隣商店街などにできるだけ多くの自動車の進入禁止区域を設ける、仮に進入させてもスピードを抑制して完全に歩行者を優先させる区域を拡大させたいと考えています。すでにドイツでは「ゾーン30」として大規模に採り入れられています。この点について貴党のご見解をお聞かせください。また以上を貴党の政策に採用していただけますでしょうか、お伺いします。

3)子どもたちやお年寄り、傷害を持つ人たちなど交通事故の被害を受けやすい、あるいは歩行に際して危険を常に感じなければならない交通弱者の安全を第一に考え、前問で言及した地域以外の道路では歩道を整備する、狭い道路は一方通行化してでも歩道を設けるという安全対策を採るのが安全な社会への道であると思います。貴党はいかなる対策をお考えかを、お聞かせください。

4)幹線道路の交差点は、歩行者が非常に多く事故に遭う箇所です。横断中の歩行者の安全を守るには、歩行者が横断中に自動車が不注意で交差点に進入したり、信号無視で突入するのを防ぐために、青信号で歩行者が横断中に、横断歩道に沿って鉄道の踏切に見られるような「遮断機」を降ろす設備を設ける、分離信号を導入するなどの物理的対策が必要だと思います。これについての貴党のご見解、あるいは、交差点における交通事故を防ぐために貴党はいかなる対策をお考えでしょうか、お聞かせください。

5)交通事故による死者への損害賠償金、慰謝料が低すぎること、過失とはいえ殺人であるにも拘わらず刑罰が軽すぎること、行政処分も曖昧であることが、運転者に「取り返しのつかない事故を起こすかもしれない」という緊張感を忘れて運転させることにつながっていると思います。人命を奪うことに対する責任として賠償金、慰謝料の額を根本的に見直すこと、人身事故加害者がほとんど不起訴にされる現状を変え、悪質な場合には執行猶予でなく実刑を課すること、運転免許の取り消しなど厳しい行政処分を課することが、自動車による人身事故を0近くにまで減らす上で必要な措置だと思いますが、貴党のご見解と、すでに政策をお持ちでしたらそれをご紹介ください。

6)自賠責保険制度の内の国の責任部分である「再保険制度」が、規制緩和の流れの中で廃止され、すべてが民間保険会社に委ねられようとしています。営利が目的の民間保健会社は補償を求める被害者とは本来的に利害が対立する存在です。国の被害者救済事業としての「再保険制度」を維持すると同時に、寝たきりなど重度障害者や高次脳機能を患う障害者のための施設の増設、自宅での介護への経済的支援の充実などを急ぐべきだと思います。貴党のご見解をお聞かせください。

7)定められた航路や軌道の上だけを運行するパイロットや航海士、鉄道運転士が厳しい資格取得試験やその後の訓練を課せられているのに較べて、軌道がなく、どこでも走ることのできる自動車の運転免許が安易に取得できる制度も見直しが必要だと思います。自動車の運転はひとつ間違えば人命にかかわるという視点で、免許取得希望者に安全教育の徹底など教習内容の拡大、運転適性検査の厳格化、既に免許を取得している人にも新しい基準で再教育するべきだと思います。貴党のご見解をお聞かせください。

8)今日の運転免許取得率の高さと、若者の二輪車・自動車事故の高い発生率を理由に高校の教育現場では、自動車教習の一部を正課授業に導入しようという動きが見られます。一方で、原付きの技能検定や自動二輪の路上検定がいまだになく、免許年齢の引き上げが他国なみに検討されないなど、わが国の二輪免許制度は性能の強大化に対応できていないと思われます。学校教育に自動車教習を普遍的に導入することは、通学手段の選択への影響を通じ、地域における交通体系の選択を二輪車・自動車の自己所有に偏らせ、逆に、事故率の上昇、さらに大気汚染・地球温暖化など環境問題の悪化という懸念もはらんでいます。学校教育における「交通安全指導」のあり方、若者にたいする「運転者教育」の手段と方法、二輪免許制度の改革について、貴党のご見解をお聞かせください。

9)世界で屈指の鉄道網を有していた日本が無原則なクルマ社会化を推し進めた結果、鉄道の地方路線が次々と廃止され、その沿線地域の生活条件を根底から奪われることになって、地域社会が荒廃し、崩壊してしまう例さえあります。公共交通が廃止あるいは減便された地域では、お年寄りや病人、子どもたちなど、また、いろいろな事情から自動車の運転をしない人たちは日常生活に多大の困難を受けざるを得ません。これら交通貧困層への対策は、地方の生活、文化を再生させる上で避けて通れない問題です。公共交通である鉄道はもちろん、路面電車・バス路線網の再生、整備が必要と思いますが、貴党のご見解と政策をお聞かせください。

10)尼崎公害患者の訴えに対する最高裁判所の判決で明らかになったように、無原則、無制限な自動車走行は近隣住民に深刻な健康被害をもたらします。大気汚染による子どもたちの呼吸器系疾患の増加も各地で心配されています。大気汚染は近隣住民の健康被害のみならず、酸性雨による森林被害の原因ともなっているとの調査もあります。これらについての貴党のご見解と政策をお聞かせください。

11)国道43号線(大阪神戸間)訴訟に対して最高裁判所は、自動車走行による振動と騒音は近隣住民の受忍限度を越えた違法行為であると判決しました。ところが、昨年、中央公害審議会の騒音部会は、最高裁判所の判決を無視して騒音基準を緩和しました。貴党は交通騒音と人が安静に暮らす権利との関係についてどういう見解をお持ちでしょうか、また、そのための政策をお聞かせください。

12)無制限なクルマ社会化に合わせて自動車道路の建設が相次いでいます。それは都市部では2階建道路による都市景観の破壊、自動車道路による地域社会の分断、騒音、振動、大気汚染をもたらし、地方では森林、山地の開発のかけがえのない森林や生態系の破壊、地下水への影響などをもたらします。狭い国土に、すでに高速道路、主要幹線道路を合わせて6万6千kmもの道路が走っています。道路建設計画は人間が安心して暮らせる町や村作り、自然を保護し、共存することを原則として見直すべきだと思います。貴党のご見解と政策をお聞かせください。

(以上。)

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