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運輸省要望書

最終更新日:1999.10.30


クルマ優先社会の改善を求める要望書

運輸大臣 二階 俊博 殿
                  1999年10月14日
                  クルマ社会を問い直す会


 私どもは、今日のクルマ社会において、特に子どもや高齢者、障害者をはじめとする社会的弱者が絶えず交通事故の危険にさらされ、死傷させられている現実をたいへん憂慮しています。また、多くの人々が排ガスによる健康被害を受けていることや、公共交通の著しい衰退により移動の自由を奪われていることも、深刻な問 題ととらえています。これらは、憲法に保障された国民の基本的権利を脅かす問題です。このような現状は、自動車の持つリスク(加害性・公害性)に対する対応策が充分にとられないままに、人の移動も物流も自動車に依存する社会システムが推し進められてきたことに原因があると、私どもは考えます。
 そうした観点から、今の運輸・交通行政を根本から見直し、かつ早急に具体的な改善策を図っていただきた く、次の点を要望いたします。


(要望項目)

1. 公共交通網を拡充してください。

2. 自動車中心の交通体系を見直してください。

3. 自動車の車体構造を歩行者に対して安全なものにしてください。

4. ディーゼル排ガス削減対策を推進してください。



(項目別要望内容)

1.道路の歩行者安全対策を優先的に推進してください。

(項目別要望内容)

1. 公共交通網を拡充してください。

(1) 鉄道および路面電車を見なおす動きは世界的なものです。ヨーロッパ諸国では従来より鉄道・路面電車を大事にしてきましたが、近年はさらに強化しています。わが国においても、21世紀の高齢化社会を視野に入れ、公共交通網拡充に向けた政策転換をはかってください。各地の鉄道・路面電車の新設・拡充を推進すると同時に、充分な補助金を出してください。

(2) 各地のバス事業は危機に瀕しています。バスが撤退したために、住民の足がなくなってしまった地域さえあります。バス事業に対しても補助金を増額し、運行を支援してください。バス事業を、公共交通網拡充の一環としてとらえて下さい。

(3) 乗合バス事業の規制緩和(バス事業参入・撤退の自由化)を内容とする法改正が予定されていますが、この規制緩和が実施されると、各地で赤字路線の廃止や縮小が起こることが懸念されています。バスは、通学生、高齢者などの自家用車を運転できない人々にとって欠かすことのできない交通機関です。バス事業の撤退により地域住民が大きな不利益を蒙ることのないよう、バス事業廃止の手続きには、住民参加による地元協議会の設置と、地元自治体の同意を条件とすることを求めます。

(4) 鉄道事業法改正案の成立により、鉄道事業の廃止が届出のみで行えることになりました。しかし、事業者が廃止を計画する路線であっても、地域住民が存続を願い、通学等の利用がある路線や貨物輸送を行なっている路線などは、鉄道事業が継続できるよう、財政補助・支援を行なうことを求めます。

(5) バス専用レーンやトランジットモールの拡大、パークアンドライドやロードプライシングシステムの導入など、公共交通の利便性を高め、マイカーからの利用転換を図る方策を、さらに推進・支援してください。



2.自動車交通中心の交通体系を見直してください。

(1) 公共交通網が危機に瀕している最大の原因は、従来の運輸行政が自動車中心に偏ってきたことにあります。今日の自動車優先政策の範囲内で公共交通網の充実を図るのではなく、公共交通網の十全な発展のために、自動車交通は第二義的なものと位置づけてください。少なくとも公共交通網整備との調和を保った政策立案を行なってください。

(2) 自動車事故により命を奪われる歩行者(自転車利用中を含む、以下同)は、毎年5500人にのぼっています(厚生省統計による)。今日の自動車優先政策がおのずからはらむこの「人命軽視」の構造を見据え、自動車中心の交通体系を根本的に見直してください。

(3) わが国における貨物車の比率は、ヨーロッパ諸国と比較しても異常な高さに達しています。物流をトラックに頼った結果、各地域で通学路から生活道路までトラックが入り込むため、生活環境は非常に悪化しています。物流をトラックに依存する今日のあり方を見直してください。この状況をさらに悪化させるような安易な許認可はしないでください。

(4) 近年、車両規制が緩められたことなどにより、巨大な貨物自動車まで街中を走るようになっており、横断歩道や交差点での歩行者の危険がますます高まっています。安易な規制緩和は行なわず、むしろ安全確保のために規制を強化し、大型車の走行場所は厳しく制限してください。

(5) 本年6月に出された運輸技術審議会の「安全と環境に配慮した今後の自動車交通のあり方について」の答申は、多方面からの安全・環境対策を打ち出していて、成果が期待されますが、貨物トラックを含めた自動車の総量削減策や、対歩行者安全対策が希薄であるように思われます。交通事故削減には、自動車の総量規制および、自動車の持つ構造・システム上の危険性を充分認識したうえでの速度・走行空間・利用等の規制が不可欠です。そうした点をさらに加味してより安全と環境に配慮した対策を打ち出してください。



3. 自動車の車体構造を歩行者に対して安全なものにしてください。

(1) 対歩行者事故を未然に防ぐ制御装置などの技術の開発・採用を推進してください。

(2) ブルバーのように衝突時に歩行者への危害を増大させる装飾品の装備を規制強化してください。また、ドアミラーなどの突起物の位置や構造を対歩行者の安全性から再考してください。

(3) 運転中のカーナビゲーションシステムの利用を自動的に停止させる機構の搭載を義務付けてください。また、携帯電話に関しても同様の機構の開発を急ぎ、搭載を義務付けてください。

(4) 運転者の酒気帯びを感知し、作動を自動停止させるような機構の技術開発を推進してください。

(5) 自動車の加速性能を必要最小限まで引き下げ、必要以上の加速性能を持つ自動車の販売を規制してください。また、道路の速度規制に感応して自動的に違反速度を抑制する機構の搭載・整備を義務付けてください。

(6) テレビ・新聞・雑誌などのクルマの広告で、過剰な速度感を感じさせたり危険を軽視したりする場面や、通常は違法となるような走行場面を使用しないよう、通産省と連携のうえ業界を指導してください。また、自動車の運転が重大な加害性を伴うことを、商品やカタログに警告表示させてください。



4. ディーゼル排ガス削減対策を推進してください。

(1) ディーゼル車排ガス削減のための技術対策を強力に推進し、ディーゼル排ガスの新長期規制の早期達成を実現させてください。

(2) 長距離貨物輸送の鉄道・船舶へのモーダルシフトをさらに推進してください。

(3) 都市内の貨物輸送用トラックは、可能な限りディーゼル車からガソリン車あるいは圧縮天然ガス車等への転換を図るよう、業界への指導・支援を推進してください。


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