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【社会民主党からのご回答】

クルマ問題と交通政策に関する政党アンケート
〜 2009年総選挙にあわせ政策を問う 〜

ご回答日: 8月 4日(消印)

歩行者・自転車利用者の安全・安心

交通事故死者が減ったと言われる半面、昨年度だけで見ても阪神淡路大震災の犠牲者に相当する被害者・犠牲者を毎年出し続けているような状況で、事故件数も高止まっています。特に昨年度は歩行者・自転車乗車中の交通死者が半数近くにのぼり、先進国では例を見ない異常事態が続いていますが、これは安易なクルマの使用を是認する社会のツケが、クルマに乗らない選択をする歩行者・自転車利用者に転嫁されているという、極めて理不尽な実態があることを表しています。

自動車が歩行者を殺傷する「事故」は後を絶たず、最近報道されただけでも、生活道路において暴走自動車が子供を轢き殺す、歩道で信号待ちをしている人を危険運転のクルマが轢き殺す、歩道に乱入したクルマが歩行者をはね飛ばす、といった凄惨な事件が頻発していますが、繰り返されるこれらの「事故」も、都度反省をし、下記のような対策がきっちり取られていれば防げたものが多いと指摘されています。

通学路の安全確保
歩車分離されていない全ての通学路において、速度制限の強化やハンプ等を用いて自動車が速度を出せない構造にすること、交差点を歩車分離信号にすることなどによる安全性向上策が有効と指摘されています。こうした施策をどう評価されますか。

■賛成 □反対

理由: クルマ社会の進展は、急激な交通事故の増加を招き、死傷者の激増をもたらしました。歩道と車道の完全分離、通行区分の明確化、スクールゾーンやコミュニティ道路の充実、「抜け道」の禁止、住宅地のクルマ進入禁止区域の拡大、路側帯の歩道化、横断歩道における信号設置の促進、狭い道路の一方通行化、生活道路特に通学路の速度制限規制の強化、ハンプなどの設置、歩道や路側帯への駐車の禁止・取締りの徹底に今後とも取り組んでいきます。また、交通安全教育のいっそうの推進や、自動車教習の強化など運転者対策も充実させます。

生活道路の交通規制の在り方見直し
自動車の走行速度が30km/hを超えると、交通事故被害者(歩行者・自転車)の重体・死亡に至るリスクが急激に高まることが知られています。生活者の安全・安心を確保するため、全ての繁華街・住宅街の道路を30km/h以下に制限することが有効と指摘されていますが、この施策をどう評価されますか。

■賛成 □反対

理由: 幅の細い生活道路での事故は逆に増えており、「歩行中」「自転車乗車中」の死者が非常に多い点が問題となっています。警察庁の検討会でも、生活道路については、衝突時の速度が30キロを超えると歩行者らが致命傷を負う確率が大幅に高まることや、欧米での規制を参考に「30キロ以下」を提言提言が出されています。当面30キロ規制を実現(地域や道路状況によってはそれ以下も)すべきです。

ドライブレコーダーの普及
自動車交通事故の原因究明と抑止に効果があり、しかも比較的安価(現在実施されている「エコカー」補助金の 1/3 程度)に搭載が可能なドライブレコーダー(事故発生前後の映像・運転操作等を自動的に記録する装置)が、営業車への導入は進んできましたが、自家用車への導入がいっこうに進みません。普及させるための具体策を持っていますか。

■ある □ない

具体的に: 事故発生時の前後の走行情報(前方映像、車両速度、急加減速など)を記録するドライブレコーダーについては、自動車事故を未然に防止する有効な手段になり得ると考えています。車載カメラをとりつけることで安全運転をするようになるという効果もあります。事故が起きたときの原因究明にも役立つと考えます。

ITS等による安全対策
ITS等の新技術を活用した制限速度・信号遵守システムや、酒酔い運転防止システムが実用段階に入っています。これらの装備の普及・義務化や、道路側の関連インフラ整備などをすすめるための具体策を持っていますか。

■ある □ない

具体的に: 技術開発、施設整備には困難が予想されますが、無謀運転・乱暴運転を抑制するためにも効果があると思います。

交通事故対策
貴党では、歩行者・自転車利用者が被害者になる交通事故をなくすための具体的な政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

■ある □ない

具体的に: クルマ社会の進展は、急速な交通事故の増加を招き、死傷者の激増をもたらしました。貴重な人命が年間一万人近く失われる事態を重く受け止めるべきです。交通事故問題は広範囲にまたがる課題であり、各省庁の枠を超えた総合的対策が必要です。「交通事故不感症」ともいうべき状況になっており、人間よりも物や金を優先させる風潮が人間の生命に金を払うことで交通事故の処理を完結しようとしているのがあたりまえとなっている風潮をただしていく必要があります。
米国ではすでに40州以上で有罪判決を受けた飲酒ドライバーに対し、いわゆるイグニッション・インターロック装置を自動車に取り付けるよう義務づけています。

環境・公害・エネルギー問題の改善

京都議定書後の地球温暖化対策を決めるCOP15の開催を控え、また今後の私たちの生活を持続可能なものにするためにも、枯渇に向かう石油に頼らない社会の仕組みづくりが求められています。

交通部門は国内のエネルギー消費量の2割を占め、そのうち自動車が9割を占めています。特に1990年比で5割以上も増えた自家用乗用車いわゆる「マイカー」は、平均わずか1.5人を運ぶために 1t もの塊を動かす必要があるため、そのエネルギー消費量は鉄道の10倍、路線バスの3-4倍にのぼり、いわゆる「エコカー」への切り替えでは莫大な費用がかかる割りに僅かな効果しか見込めないことから、まずはクルマを減らして鉄軌道・バスや自転車の利用を増やすことが必要であると指摘されています。

また、工場排煙への環境対策が進む半面、自動車排ガス対策は進まず、特に自動車走行量が増えたことによる公害が深刻度を増しています。喘息罹患者数が急増し続けており、特に幹線道路沿いの健康被害が著しく顕れるなど、自動車排ガスによる公害がますます深刻になっています。

クルマ以外の交通手段への転換促進策
日常生活におけるクルマ依存が、渋滞や環境、健康などへの悪影響を及ぼすことから、たとえばロードプライシング(渋滞課徴金など、あえてマイカー利用を選択する者の負担を引き上げる施策)やモビリティ・マネジメント(情報提供などによりマイカー以外の利用をすすめる施策)など、マイカーから公共交通や自転車、徒歩などへの転換をすすめるための政策が提案されています。このような、過度なクルマ利用を減らすための具体策を持っていますか。

■ある □ない

具体的に: 私たちの生活や環境は、クルマ社会から大きな脅威を受けています。公害裁判では自動車の公共性自体が争われたものであると認識しており、マイカーに本当に公共性があるのか自体疑問です。何よりもクルマの総量規制を進め、脱クルマ社会をめざします。ヨーロッパの都市の多くも公共交通を街づくりの基本に据えており、公共交通の復権は世界的な潮流といえます。規制緩和先進国といわれるイギリスでも、規制緩和後のルール作り、新たな交通政策が現実化しはじめています。社民党は、マイカーへの様々な規制や負担の強化と一方での公共交通の支援と活性化対策、利便性の強化を進めていくべきであると考えています。さらに、飲んだら乗るなキャンペーンの展開、マイカーに依存せず公共交通を活用した、エコ通勤を導入する企業への支援策などを進めています。

貨物輸送のモーダルシフト
現状では陸上貨物輸送の9割を自動車が占めていますが、中長距離は鉄道などを、末端部は台車や自転車などを活用することで、貨物自動車を減らすモーダルシフトをすすめることが必要です。そのための具体策を持っていますか。

■ある □ない

具体的に: 社民党は、物流の効率化、環境対策を推進するため、幹線物流における貨物鉄道輸送や内航船舶輸送の強化、各交通機関相互のアクセス向上、共同配送拠点の整備を進め、自動車輸送からの移転(モーダルシフト)を促進します。コンテナ貨物輸送の増強など貨物鉄道に対する支援措置を強化しますということを主張しており、「モーダルシフトの推進」に取り組んできました。
分割・民営化の負の側面として、貨物鉄道の経営のあり方も考え直すべきです。社民党は、コンテナ貨物輸送力増強支援と新幹線並行在来線貨物対策の強化、旅客鉄道と貨物鉄道のダイヤ等の調整の円滑化などの課題に取り組んできましたが、第151国会では、行政としてもJR貨物の経営動向を踏まえつつ、その改善に資する所要の措置を講ずることとするとの附帯決議が付されています。国が21世紀における鉄道貨物輸送の公共性を十分認識し、貨物会社が成り立つような経営構造をきちんと国側が責任をもって果たすべきであり、税財政上の支援を含め、積極的に貨物鉄道支援に乗り出すべきではないでしょうか。
引き続き貨物輸送の復権・充実に向け全力で取り組んでいきます。

クルマの総量を減らすための施策
道路整備を進める理由にはよく「渋滞解消」や「環境対策」が挙げられていますが、需要管理がされてこなかったため、結果として道路整備により便利になった自動車は走行量が増え、1990年から2007年まで自家用乗用車から排出される CO2 が5割増になるなど、自動車が原因となる環境問題や渋滞は悪化し続けてきました。このような問題を解消させるためにはクルマの走行量そのものを減らすための政策が必要と考えられますが、そうした政策を持っていますか。

■ある □ない

具体的に: 交通需要マネジメントを推進し、自動車の都心部乗り入れ規制や台数割当制度を導入するなど、中心市街地の自動車の総量規制に踏み出します。ロードプライシングを実施し、にぎわい楽しく歩ける街をつくるべきであり、脱クルマ社会を展望して努力しています。また、イギリスでは道路交通削減法という法律が制定され、目標を立てて道路交通量の削減を進めていることも踏まえた対策の強化を考えています。パーク・アンド・ライドなど自動車・自転車と生活交通の連携を進めます。不要なマイカーの利用を抑制するため、公共交通を利用しやすくするようにするとともに、カーシェアリングや公共レンタカー制をすすめます。

PM2.5(微小粒子状物質)への環境基準の設定
自動車や工場などから排出され、呼吸器はもとより循環器系疾患の原因にもなると指摘されている微小浮遊粒子状物質 (PM2.5) への環境基準設定の議論が進んでいます。今のところ年平均値で 15μg/m3(米国が採用する、死亡リスクが高まる水準)かそれ以下の環境基準設定が検討されています(中央環境審議会 大気環境部会 答申案)。この環境基準設定に賛成ですか。
また、WHO では同 10μg/m3(健康リスクが高まる水準)をガイドラインとしています。日本の環境基準の思想に照らし、適切だと考えられる水準がありましたらご記入ください。

■賛成 □反対

適切な基準: 空気中に漂い、吸い込むと肺がんや循環器疾患の原因にもなる微小粒子状物質「PM2.5」については、従来の規制物質よりさらに小さく、重い健康被害につながる恐れがあります。2007年8月に和解が成立した東京大気汚染訴訟の原告のぜんそく患者のみなさんも、基準設定を強く求めており、和解条項で国による環境基準設定の検討が盛り込まれた経緯があります。今回、環境省は米国と同レベルの年平均で1立方メートル当たり15マイクログラムの案を考えているようです。
PM2.5の発生源は主に自動車であり、基準を設定すること自体は評価できますが、できればWHO並みの厳しい基準を目指すべきであると考えています。

自動車諸税を自動車の外部費用課税と位置付けること
自動車関連税(自動車税、重量税、ガソリン・軽油・LPGへの課税)の大部分は、昨年度までは「道路特定財源」と言われ、税収をすべて自動車利用者の便益向上に使う仕組みになっていました。反面、自動車の利用が周囲に及ぼす影響(健康被害や地球温暖化など)については考慮すらされず、たとえば喘息などの公害病を患った人の半数は仕事を失い、苦しい生活を強いられる上に医療費なども負担させられてきました。
このような実情を踏まえ、自動車への課税は外部費用課税であると明確に位置付け、その課税を強化するとともに、公害や交通事故等の被害者への補償、および抜本的な環境対策(公共交通の利用促進など)を行う必要があると考えられますが、これに賛成ですか。

■賛成 □反対

理由: 自動車関連諸税は、受益者負担原則に基づき、道路奥体財前として取り扱われてきたし、「担税者の理解」を前提として使途の拡大が行われてきました。しかし、交通事故の多発、地球環境の悪化をはじめとするクルマ社会の負の側面の対策こそ必要であり、本来自動車利用者が負担すべき社会的費用を自動車関係者に適正に負担していただくのは当然であり、従来の発想を転換し、環境対策と総合交通体系の構築という新しい国づくりのビジョンの下、その位置づけやあり方を見直して活用すべきであると考えています。暫定税率は廃止した上で、自動車がたくさん走れば走るほど膨らむ社会コスト全体を考えて改めて負担の水準を決めるべきです。そして、地方の生活バス路線や地方ローカル鉄道、LRT(新型路面電車、軽快電車)に対する財政措置の強化、自動車排気ガスなどの呼吸器疾患や環境汚染に対する対策費用、交通事故被害者救済のために振り向けるようにすべきであると考えています。

環境・エネルギー対策
貴党では、自動車が原因となる大気汚染・騒音・振動などの環境・エネルギー問題を抜本的に改善するための政策をお持ちですか。 なお、上記以外の具体策をお持ちでしたら当欄にご記入ください。

■ある □ない

具体的に: 交通体系の見直し、自動車の排出ガス規制の強化を提案しています。
(1)自動車やトラックが主流となっている人や物品の輸送を鉄道や海運へ転換します。公共バスについては燃料電池化、ハイブリッド化を進めるほか、新しい路面電車LRT(軽快電車)に転換します。また都市部での交通量を抑制するため公共交通とマイカーの連携をスムーズにするパーク&ライドを普及します。さらに公共交通機関を充実し、人々がマイカーでなく公共交通を積極的に利用する施策(公共交通の方が経済的で利便性が高くなる施策)を進めます。
(2)ディーゼル車から排出されるNox(窒素酸化物)やSPM(浮遊粒子状物質)は依然幹線道路周辺を高濃度汚染しており、積極的に発生する多量の自動車排ガスが、ぜんそくなど健康被害を招き、重大な権利侵害をおこしています。
各公害判決を踏まえ、各自治体と連携を図りながらディーゼル車の総量規制(走行量規制)、健康被害実態の調査、被害者の救済、メーカーの責任追及と補償、有害物質の除去など排ガス・大気汚染防止対策を実施します。
局地的な高濃度汚染対策、対象物質や環境基準の見直し、自動車Nox・PM法の見直し(対策地域の拡大と流入車規制など)、低公害車の普及など自動車排ガス規制対象を強化します。

公共交通・自転車利用環境の充実

道路上の安全・安心や環境にやさしい生活を実現するためには、クルマに依存しない生活ができる環境整備が欠かせませんが、道路が税金で造られる半面、同じく私たちの生活を支えている鉄軌道や路線バスには厳しい独立採算が求められ、郊外はおろか都市部ですら路線の縮小・廃止が相次いでいます。

また、環境にやさしく、適切に使えば安全性も高い自転車についても、走行空間の未整備や誤った利用(歩道走行や逆走など)が問題になっています。

さらに、エネルギーの大量消費を前提とする自動車利用を減らし公共交通や自転車の利用を促進する政策を実施することで、域外への所得流出を減らし、可処分所得の増加や地域経済の活性化に有効との指摘もあります。

地方鉄道や路線バスの再生
存続の危機に瀕した地方鉄道や路線バスの再生・活性化が全国的な課題となっており、たとえば鉄軌道では上下分離(軌道や駅などの設備にかかる費用は公共部門が負担し、運行・サービスは民間が提供する)の導入などが、路線バスでは運行費補助の強化などが必要と指摘されています。このように地方鉄道や路線バスの廃止を防ぎ再生させるための具体策をお持ちですか。

■ある □ない

具体的に: 「公共交通は赤字でも福祉など他の分野で便益を生む」というクロスセクターベネフィットの考え方で、地方の生活バス路線やコミュニティバス、福祉バスへの財政措置を強化するべきであると考えます。
地方鉄道を維持するため、「公共近距離輸送は生存配慮にかかわるので維持しなさい」というドイツの「地域における公共近距離旅客輸送に関する法律」にならい、「公共交通の根幹をなす鉄道を守る」立場に国・自治体の交通政策を転換させ、地域住民の生活路線であり、鉄道ネットワークをなす地方鉄道に対する補助制度を抜本的に見直すとともに、基盤保有と運行を分離する「上下分離」方式の活用を検討します。
一般財源化された道路特定財源を、「クルマ社会」の負の側面を軽減する政策に充当することとし、地方鉄道や路線バスの維持・再生を支援します。

LRT・BRT・コミュニティ交通の導入促進
公共交通の利用者を増やすために、幹線には快適で便利な LRT(次世代型路面電車)・BRT(バス高速交通)の、末端部にはきめ細かなコミュニティ交通の導入が期待されていますが、法規制や財源などの壁が立ちはだかっています。これらの普及促進のため、既存車道の再配分をはじめとする導入空間や財源の確保、法整備などを含めた具体策をお持ちですか。

■ある □ない

具体的に: 従来から社民党は、人と環境にやさしい生活交通体系として、超低床車両を使用した新しい路面電車であるLRT(軽快電車)を強力に支援する施策を打ち出しており、軌道・車両に対する税財政上の支援を拡充するとともに、軌道の専用化を進めていきます。また、歩行者専用のショッピングモールに公共交通を運行させた商業空間(トランジットモール)を広げ、街ににぎわいと魅力を取り戻し、「トランジットモデル都市」を目指します。さらにBRTやコミュニティ交通の導入についても支援しています。
LRT推進のための法整備も検討しているところです。

自転車の適切な活用
自転車が本来持つ安全性や利便性を発揮させるためには、自転車の車道走行の徹底や、既存の車道に自転車レーンを確保することなどが求められています。そのための具体策をお持ちですか。

■ある □ない

具体的に: クリーンな乗り物である自転車の活用を進めていくため、自転車道や自転車通行帯、自転車駐輪場の整備を推進するとともに、サイクル・アンド・バスライドや生活に密着したレンタサイクルを広げます。片側二車線以上ある道路では必ず一車線を自転車(およびバス)の優先車線とする、片側三車線以上ある道路では必ず一車線を自転車の専用車線とするべきです。なお、歩行者に対する事故が増えており、自転車の通行に当たって、歩行者との分離や一定の規制を行う必要があると考えています。

総合的な交通政策

私たちの毎日の生活に欠かすことのできない交通において、上記のような様々な問題が噴出していますが、その改善はいっこうに進みません。こうした問題を改善してゆくためには、自動車単体など個別の改善では限界があり、総合的な交通政策が求められています。

たとえば、早くからクルマ社会の弊害を経験し、近年急速に改善が進む欧州では、道路上での優先順位を

「子供・車椅子など>歩行者>自転車・公共車両(路線バスなど)>貨物自動車>自家用乗用車」

であると確認したからこそ、人にやさしい市街地形成や、LRT・貸し自転車の導入などの分野横断的な施策を進められたのだとも言われています。

交通権
クルマに乗らない・乗れない人を含めたあらゆる人に、日常生活に必要な移動を保障する観点から、交通権の保障を定めた法律が必要との意見があります。このような法整備をどう評価されますか。

■必要 □不要

具体的な内容や理由: 「クルマ社会」の行き過ぎを転換し、公共交通を基盤に置いた人と地球にやさしい総合交通体系の確立を目指します。「誰もが、いつでも、どこからでも、どこへでも」安心・安全・快適に異動できる権利を保障するため、「交通基本法」を制定すべきだと考えています。
残念ながら廃案になってしまいましたが、民主党と社民党が共同提案した交通基本法案は、生存権と自由権の両面から移動に関する権利を明確にすることによって、交通条件に恵まれない地域における交通施設や移動制約者に配慮された交通施設の整備の促進、都市部における交通の混雑の緩和など利用者の立場に立った施策を進める基礎を築くとともに、縦割り行政の弊害をなくし、総合的・計画的な交通政策の推進、環境に十分配慮した交通政策の推進を目的とするものです。社民党は選挙政策でも、「フランスの「国内交通基本法」にならい、「交通権憲章」運動を進め、憲法の幸福追求権、居住・移転の自由、生存権に立脚する「移動の権利」としての交通権の保障、交通社会資本の基準、生活交通機関の位置づけ、生活交通に対する補助、総合交通会計制度、交通運輸労働者の労働環境の保護、安全輸送の確保などを盛り込んだ「交通基本法」を制定します」ということを公約としています。今後とも法案の提出・成立を求めて取り組んでいきます。

「高速値下げ」への評価
今春より実施された「高速道路料金の大幅引き下げ」により、JR旅客各社の鉄道利用者が未曾有の減少を記録した他、地方鉄道や高速バス、フェリーなどにも深刻な悪影響が出ており、特に週末の高速バスは渋滞に巻き込まれて実質機能不全に陥っています。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

□良い ■悪い

今後の対応: 民営化された高速道路各社に料金割引分を税投入し、効率化や営業努力と関係なく料金保証をする政策は、交通モード間の不公正な競争をもたらすものであり、受益者負担原則や地球温暖化対策や騒音・大気汚染対策、財源問題、公共交通の利用促進といった総合交通政策との整合性、地域生活交通への影響等の観点から多くの問題があります。モーダルシフトの推進にも逆行します。国が地域の活性化や国民生活の下支えをするのであれば、公共交通や物流などのすべての交通モードに対して必要な対策を講じるべきです。

マイカー優遇策(「エコカー」減免税、補助金)への評価
実質的にマイカー利用のみを有利にしている「エコカー」減免税や補助金などの優遇策は本当に「エコ」なのか?という指摘が相次いでいます。この政策を総合的な交通政策の観点からどう評価し、今後どう対応されますか。

□良い ■悪い

今後の対応: 政府の補正予算では、ドイツの「環境奨励金」の支給(スクラップインセンティブ)やアメリカの燃費効率の良い新車に買い換える際にバウチャーを発行することに範をとったのか、環境対応車(エコカー)購入支援と省エネ家電の購入補助制度(エコポイント)が経済活性化に向けた目玉としてあげられています。確かに、買い替えサイクルを復活させる呼び水効果が期待できるとか、自動車と家電は部品メーカーなど関連業種が多く、高い波及効果が見込まれるという指摘もあります。
しかし、ここ数年の需要喚起の後は大幅な需要減がおそってくるのではないかという問題もあります。
何よりも、「低炭素革命」を本気でやろうとしているのか疑問です。具体的にCO2削減など低炭素化に向けてどの程度寄与するのか不透明です。買い換えられたテレビや自動車も膨大なごみになりかねません。本当に低炭素化を進めるつもりなら、自動車・家電メーカーに対し、より厳しい排ガス規制や省エネ基準のハードルを課すべきです。
結局、環境対策というよりも世界不況で輸出が急減した自動車や家電といった特定業界の要望に応えた要素が強いと思います。自動車や家電の販売不振に対して消費喚起を目的とするのならば、家計に安心をもたらすよう、雇用の安定、賃金引き上げなどの個人消費活性化策を講じるべきです。メーカー自ら若年労働者を低い賃金でこき使っておいて、車や家電を買ってくれというのも虫がいいのではないでしょうか。どうしても自動車産業を救済したいというのであれば、電気バスやハイブリッドバス、天然ガスバスを支援する方がましです。
この間の高速道路の割引やエコカー減税という自動車優遇政策によって、フェリーや鉄道など地球にやさしい公共交通にしわ寄せが出ており、マイカーに頼らなくてもいいまちづくりや地域づくりにもっと大きく踏み出すことが必要であると考えます。バスや鉄道の方がエコであり、公共交通への利用促進策にお金を振り向けるべきです。

ありがとうございました。
クルマ社会を問い直す会   代表 杉田 正明
 
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※本質問書へのご回答は 8 4日(火)で一旦締め切り、その時点での集計結果を報道機関向けに発表させていただきます。また、その後にいただいたご回答は随時ホームページで追加報告をさせていただきます。

※本質問書およびいただいたご回答(ご回答の有無、時期とその内容)は、多くの皆さんの政策判断にお役立ていただけるよう、当会ホームページ http://toinaosu.org/ や報道発表などを通じて公開させていただきます。

※自由回答欄が不足する場合は、適宜、別紙などをご用意いただければ幸いです。